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海賊二次文自己満足ゾサ風味 黄色いあの子偏愛 管理者:ここのつ
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コーヒー&シガレット シリーズは、コックさんと誰かがお茶してるってだけの話です
お相手は順ふどー 気分です よければどぞー
一発目は兄貴です 大人な男でやんす




背伸びして 爪先立って 大風呂敷広げて 精一杯 格好つけて
笑ってね

苦ければ苦いほど効果があるような気がしてたんだ

珈琲を一杯いかが?
もしきみが いやでなければ
ぼくと
珈琲を一杯いかが?

08 coke&cigarette


「アウッ!寒い寒ぃ!!」
手をこすり合わせながら(手は寒くないのだが背中が寒い)ダイニングキッチンに入る。
キッチンの火はほどよいぬくもり。ふと肩の力を抜けば、黒のスーツが振り返り、ごくろうさん何か飲むか、と。
野郎にはもれなく愛想なしだが、夕餉の支度の手を止めてそう問う気遣いは分け隔てない。
「コーラ頼む!」
カウンターに腰掛けてご所望。コックはレードルを置いて奇妙な顔をした。
「寒いんだろ?」
「おう。航海士曰く今夜は雪だと。んん~、みちのく雪旅情!」
「で、コーラ?」
「おう!」
「・・・ホットじゃねーよな」
サイボーグの考えることはわからん、と。ぶつくさ言いながらも冷蔵庫を開く。
ありがたいことにフランキーのおなかは丈夫だ。冷え性だけども丈夫だ。なにせ冷蔵庫。腹痛知らず。それはサンジも承知している。羨んでいたくらいだ。が、どうも違和感が拭えないらしい。
コックの美意識に反するのであれば別にお茶でもかまわないと、以前フランキーは言ったが、欲しいものを欲しいと求められない方が腹が立つそうなので、結局フランキーは毎度コーラをご所望。サンジは毎度首をかしげつつもコーラを提供。

そういえば、フランキーが船に乗った日、コックは真っ先に訊いた。
その舌は生か?
多少気分を害してフランキーはイエスと答えた。ナマもなま。新鮮生き生きだ。
今更、サイボーグのこの体を奇異の目で見られることなどへでもない。が、コーラやハンバーガーをバカにされるのは気に食わない。
前菜だのメインだのお上品でややこしい料理のどこが良い。フライドポテトはスーパーだ。
多少害した気分はしかし、次の瞬間ふっとんだ。
「そりゃあ良かった!俺のスペシャルディナー味わえねんじゃおまえ、一生分損すんぜ!」
コックは、偉そうな物言いとは裏腹にひどく安堵した笑みを見せた。
不覚にも、フランキーはうろたえた。
そのあどけなさに。
「バーベキューんときだっていたじゃねーか」
「ん?そーだったか?人数多すぎてわかんなかったな。つーかおまえんとこ大所帯過ぎだろ!」
快活に笑うサンジは上機嫌で、夕食の味見をさせてくれた。なんだか、気の抜けたコーラみたいな気分になったもんだ。

「しんしん冷えたときにはさぁ、ホットとかラムティーとかココアとかさぁ。飲みたくなるもんだろう。そういや、パティも寒い日にソルベ食うの好きだったけか。やぁでもコーラはよ~」
フランキーには意味不明な単語の混じる独り言をしながら、炭酸弾けるグラスを寄越し、別にティーカップを用意する。ソーサーを火にかけ、その火でもって煙草点をける。
この船の夕餉ときたら、八人のくせにフランキー一家(ソドムとゴモラは除くが怪力デストロイヤーズは含む)と同じくらいの量がある。うっかり「玄海荒波食い嵐」を歌ってしまったほどだ。
その、大量ディナーの準備にひと段落ついたらしい。シンクにもたれて天井を仰ぎ、勢いよく煙を吐く。ロケットマンの蒸気みたいに。細い首ののど仏がやけに目に付いた。
「やる?」
視線を勘違いしたのか、サンジが煙草を掲げる。
「んじゃ一本」
フランキーは特に喫煙の習慣はないが、気分でやることもある。煙草の在庫に余裕があれば、サンジは気前よく分けてくれる。

ゆらゆらと白い筋二本。キッチンは静か。湯の沸く音だけ。
ジ、と煙草の火の立つ音さえ明瞭に。
風は順調、波は安定。表から届く歓声も遠い。
料理人はとても静かだ。だからフランキーも、何も言わない。

騒ぎ出したらとまらない性分の自分が、たまにぼんやりしたいとき、かつてブルーノのバーに行った。騒ぐにも黙るにも、あそこは心地よい場所だった。
それは確かにそうだったのだ。
今こうして静かに、五体満足に、あのころを思い出せることをフランキーは感謝している。

と、扉が開いた。
「あら良い香り。ちょうど良かった。私にもちょうだい」
「ああーんナミさんvいらっしゃぁいvv」
とたんにカウンターから飛び出してエスコートするのはコック。
「今入れるよ。紅茶だよね。蜂蜜いれる?」
「珈琲が良いのよ。まだ余りあるんでしょ?お砂糖抜きでミルク多いめ」
「ホントに?俺の愛情もたっぷり入れとくから~~vv」
踊る料理人を一分の隙も無く黙殺し、航海士は椅子に腰掛ける。
「チャンネル大丈夫だった?」
「アウ、誰に言ってんだ?今週の俺はスーパーだぜ!!しっかし海王類っつーのも漢前なやつだ」
「今回ははぐれ海王類だったからね。カームベルトに行ったらあんなもんじゃないわよ」
「ナミさんお部屋までお持ちしましょう!!」
「ううんいらない」
「きっぱりナミさんも素敵だぁv海図がんばってねん!!」
ナミはひらひらと手を振って答えた。サンジは器用にハート型の煙を浮かべ、キッチンに戻る。
海図作ってんのか。首を傾げてフランキーが問えば、サンジは当然のようにすらすらと。
「今、波が安定してっから。あんたんちの島ついてからこっちバタバタし通しだったしなぁ。ナミさん忙しかったろ。ルフィたち勝手に遊んでるし。まとまった時間のあるときに書くんだよ」
その後には延々、意味のあるようでない賛美の言葉が続いた。
フランキーは、ほう、と煙を吐いた。
「サンジサンジ!雪降ってきたんだぞ!」
飛び込んできたのは船医。青っ鼻を赤くして。
「まじか。さっすがナミさんだぁ~v」
「ナミじゃねーぞ!雪だ!久しぶりだ俺」
「おいサンジ、上着取ってくれい。急に冷えてきた」
「うっわ汚ねぇ手だなぁ」
追って入ってきたのはウソップ。長っ鼻を赤くして。袖を捲り上げた両手はどろんこ。
「もうすぐ完成だ。土いじりのウソップ様とは俺のことだぜ!!」
「ロビンちゃんの素敵花壇なんだから気合いれてやれよ!?」
サンジは少しム、として、びしりと煙草で念を押す。
花壇スペースの誕生にあたり、ロビンがまず植えようとしたのはガーベラだった。ガーベラを知らなかったサンジは、ハーヴに使えるか実は食えるのかと聞いた。
大顰蹙だった。
「まぁ!サンジくんがそんなこと言うなんて!信じられない見損なったわ!ね、ロビン!」
真っ先に口を開いたのはナミだが、女性陣の結託は強い。まさにツーカー、ビバ!アイコンタクト。
「ええ。お花が咲く前に食べられてしまったら、悲しいわ」
サンジは驚愕した。
まさか自分が、この白馬の騎士が、女性を悲しませてしまうなんて!!しかも女神と仰ぐ麦わら一味のレディを。
這い蹲って謝り倒しおやつと夕食のリクエストと見張り番の代打を約束した。それはもう、酷いうろたえようで。見ていたフランキーは気の毒になった。が、彼はそこそこ大人なので麦わら一味の女ふたりに口ごたえはしなかった。

そんなことがあったのでサンジは少々花壇に近づきにくいのである。
「あー、俺もロビンちゅわんに手とり足とり教えてさしあげてーよvv」
「サンジ、足は使わねぇ」
「うっせぇトナカイ!ほれ、これ着ろ。あと、赤いのがルフィのと紫のがロビンちゃんのだからな。ロビンちゃんの上着汚すんじゃねーぞ!しっかりお届けしろよ。ウソップこれ紅茶な。熱いから気をつけて飲めよ」
上着と魔法瓶を受け取って、元気よくふたりが飛び出す。開いた扉の向こうからルフィの叫び声とロビンの笑い声が聞こえてきた。
サンジはカウンタの内側に戻り、冷めかけの珈琲をすすり、新しい煙草に火をつける。
「なぁ、おまえ『あつもりそー』って知ってっか?」
「アアン?何語だそれ。どこで区切れるんだ?」
「さぁ。今度植えるんだって」
なんとなし、眉毛の巻きが情けなく下がり気味で、フランキーは笑ってしまった。

「・・・・・・」
無言でもって、その存在感ばかり雄弁に、のそりと入ってきたのは剣士。この船随一の強面健在。筋肉の盛り上がり具合はフランキーに次ぐ。但し全身ナマ。
「おうマリモ。ちょい待てな。つーか外雪だろ?なんでそんなほかほかよ」
極寒の外気の中でトレーニングをしていたらしい剣士は、上半身裸。そのたくましい半身には血管が浮き、汗を弾く肌はつややか、そこから立ち昇る上気。
「直ったのか?」
「ん?ああ、朝飯前だぜ」
フランキーと反対側のカウンターに腰掛ける。その前にコックがグラスを置いた。中身はコーラ、ではなく剣士専用ドリンク。船医と一緒に開発したという栄養飲料だ。
ぐっと煽って一瞬で空っぽ。無言でグラスを押し出して、ぷいっと立つ。
「おいマリモ、もうすぐ飯だ、寝んなよっ!」
「起こしに来いよ、アヒル」
「はあああっ!?てめぇ何様のつもりだ緑ハゲ!!なんで、俺様が、天才コックが、起こしにいくんだよ、なああぁぁんで!!」
ケ、と一言吐き捨てて、剣士は出ていったのであるが、それをコックが猛然と扉のところまで追っかけたものの蹴りは出さず罵詈雑言を浴びせかけるに留めて戻ってきたのは、火にかけっぱなしの鍋が手のかかる料理らしい。
「くっそ、あのマリモめ、いつか俺の蹴りで沈めたところを釣り針にかけて海に沈めてエレファントホンマグロの餌になれ!!」
めちゃめちゃな文法で呪いの言葉を吐きながら、灰汁を取る手つきはあくまで丁寧。それでは腹の虫が収まらなかったのか、じゃがいもをみっつよっつ取り出し猛然と剥き出した。タタタと刻む包丁捌きはさすが。
「器用なモンだなぁ」
思ったまま口にすればこちらに寄越した目がまんまるで、次の瞬間ニカッと笑った。
「喜べパンツ!晩飯にフライドポテト追加だ!」
忙しい男。

夕食まで、フランキーはずっとカウンターに座っていた。
その間コックは、魔法瓶を持ってきたロビンにくねくねと絡み、飛び込んできた腹ペコ船長とちょっとした攻防の末、キッシュを一枚焼いた。こっそり酒を取りにきたゾロを蹴りだして、チョッパーとフランキーを手伝わせながらテーブルを整え、手伝いをしたふたりには内緒で揚げたてポテトを振舞った。もちろん、魔法のような手際で夕食を仕上げながら。
フランキーはふと考えた。

ここはどこだったろうか。このあたたかい場所は。

それから、お得意のポーズで叫んだ。
「ん~~、スーパー!!!」
「うっせーぞヘンタイ!飯だ!!」



おわり
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